演繹と帰納 統計学の手法

 

 あなたは、刑事ドラマが好きですか?

 

 「日本の刑事裁判における有罪率は、99.9%。一旦起訴されたらほぼ有罪が確定されてしまう。このドラマは、残りの0.1%に隠された事実にたどり着くために難事件に挑む弁護士たちの物語である。」というナレーションから始まる、「99.9」というドラマが2018年1月から3月にかけて放映されました。

 

 一般に、刑事事件が起これば、警察により犯行が特定され、検察により起訴されれば、裁判で刑がほぼ確定されてしまいます。

 

 ドラマ「99.9」では、刑事弁護士が警察により特定された犯行を、新たに集めた事実の一つひとつを検証して崩していく物語となっています。

 ふつう、警察は現場から類推できる仮定(ストーリー)に基づいて犯行を特定します。この解決方法を演繹法と言います。

 

 それに反して、一つひとつ事実を集めて客観的な結論に結び付ける方法を帰納法と言います。

 このドラマでは、「ただ事実が知りたいだけなんです」という、主人公の呟きがキーワードとなっています。

 

 演繹法の弱点は、最初に特定するストーリーの信憑性が常に問われるということでしょうか。証拠となる事実の把握に漏れがあれば、確定された刑が覆される、冤罪となるということです。

 

 一方で、帰納法のアキレス腱は、「事実」の範囲が確定していないことです。極端なことを言えば、砂浜に落としたケシの粒を拾うようなものかも知れません。これでは、日常起こる刑事事件に一々対応しきれなくなるのが火を見るよりも明らかでしょう。

 

 このように、演繹とは、ある事例や仮定に基づいて論理的推論により結論を導こうという方法であり、帰納とは、個別の事例を集めて一般的な法則を導こうという方法であるのです。

 

 だから、一般に刑事事件では現場の事実=証拠集めに全力を挙げて徹底捜査に努めるわけです。

 そして、それをもとに類推できる仮定(ストーリー)に基づいて犯行を特定するのです。

 

 「99.9」は、ドラマだからできる、明確な対立設定なのですが、だからこそ分かり易い「演繹と帰納の違い」の具体的な解説となっていると言えるのです。

 

 統計学は、過去の事象はもちろん、現在起きつつある事象とも関連付けて分析する帰納的推論を重視する学問です。また、統計学によって帰納的推論の確かさが数量化されているといってもいいでしょう。

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